さて、山菜を採りに行こうと意気込むけれど、やっぱり気になるのが熊の存在。
どんなことに気をつけたらいいの?そもそも熊ってどこにいるの?そんな素朴な疑問を、クマの狩猟を生業とする山のプロ、マタギに教えてもらいました。
Q.クマはどこにいるの?
クルミ、どんぐり、栗が熊の大好物。ブナやミズナラ、コナラの実も大好きです。そういった木の近くには熊もいる可能性が高いでしょう。木の幹に、クマが登った時の爪の跡がついていることも。
クマは木に登り、木の枝を折って手繰り寄せ、そこについている実を食べますが、残った枝をお尻の下に敷いていくんです。そうやってできた座布団のような枝の集合をクマ棚と呼んでいます。木の上にクマ棚を見つけたら要注意。鈴を鳴らしたり大声を出して熊に自分の居場所を知らせましょう。
Q.クマはいつ冬眠から起きてくるの?
熊の目覚めは4月10日ごろ〜5月にかけて。
倒木の穴や岩の影、土の窪み、木のウロの中などをベッドに冬眠していた熊は、4月の中旬ごろ起きてきて活動を始めます。子連れのクマが出てくるのは大体5月の半ばごろ。
この子連れの熊には注意が必要です。好奇心旺盛で、人間にも付いてきてしまう子熊はとても愛らしくて思わず近寄りたくなってしまいますが、親熊は子供を守るために常に臨戦態勢で、出会った瞬間に襲ってくるので、とても危険。子熊を見つけたら絶対に近寄らず、すぐに遠くに離れましょう。
Q.山菜を採りにいく時に心がけることは?
ここにいるよ、と自分の存在を熊に知らせるのがだいじ。
秋田にいるツキノワグマは実は臆病で、人の気配がしたら隠れて自分から避けていってくれます。そもそも熊にとって人間は食糧ではありません。ただ、角でばったり出会ってしまったり、熊の不意をついてしまうと、驚いて反射的に人を襲ってしまうんです。
里山で生まれ育ち、人間の怖さを知らずに人の味を覚えてしまった熊などごく少数の例外はありますが、ニュースになるような事件は、熊が驚いて襲ってしまったケースが大半。鈴をつけたり、大声で叫んだり、鐘を打ったり、遠くにいるうちに自分の存在をしっかり知らせれば、怖がりすぎる必要はありません。
むしろ、クマに会いたいと思っていてもなかなか会えない。僕なんかは出会えた時は嬉しくなって、逃げていった熊を追っかけて行っちゃいますよ。
Q.マタギもクマは怖い?
僕からしたら、クマは怖がるものじゃない。
熊が特別恐ろしいもののように思われているけれど、彼らも山の一部。共に山に暮らすものとして、お互いの距離感を保ちながら生活すれば良いんです。
マタギ 英雄さん
マタギとは、古くから続く伝統と倫理観を尊び、集団で熊などの狩猟を行う人びとを指す。英雄さんは秋田県北秋田市阿仁打当地区にいる、マタギのシカリ(リーダー)。冬の始まりと春の始まりの年2シーズン、山に入り、熊の狩猟を行っている。
好きな山菜を尋ねると、「全部にそれぞれ個性があるから、これさえあればいいというのはない。全部食べたい。」と山菜愛溢れる回答をしてくれた。中でもアイコ、シドケ、ウド、うるいがお気に入りで、アイコはそのまま丸ごと味噌に漬けて、一夜漬けにするのがおすすめだそう。