私は2021年の春に秋田県仙北市に移住した。

元々、自然の近くで暮らしたいと思っていて、秋田駒ヶ岳や田沢湖とか、たくさんの自然に囲まれた秋田に移住を決めた。

今の住処はあたり一面が森や田んぼに囲まれた所。日が暮れるといつもカエルが大合唱を始める。

首都圏の街中に住んでいた私には、毎日が驚きと心地よさの連続。


そろそろ目の前に見えている駒ヶ岳に登ってみようかなと思っていた時、秋田の登山好きな友人から鳥海山登山に誘われた。

鳥海山といえば2000mを超える大きな山。ちょっとしたハイキングはよく行くけれど、本格的な登山は初めて。ワクワクと緊張が混ざった不思議な感覚でその日を迎えた。

午前3時。私の新居から車で出発。秋田で生活は基本は車移動。まだまだ外は暗い。登山はこんなに朝早くから登り始めるのか。

途中で友達と合流して一台の車で登山口へ向かう。まだ4時だけど、夏が近づいているからか、もう空が明るくなってきた。道中窓の外を見ると、鳥海山には厚い雲がかかっていた。お天気大丈夫かな。 

登山口に到着。車で五号目まで登ってくると、なんとここは快晴。そっか、すでに雲の上だから、雲を抜けたらそこは晴れているのか。当たり前のことかもしれないけれど、感動しながら空を眺めた。

準備運動をしていざ出発。

今日挑戦する鳥海山という山は、登るのが結構大変な山らしい。今回は経験者の友人が事前に色々と心得を教えてくれた。普段運動不足なら、登る何日か前にスクワットをして筋肉痛を経験しておくといいとか、水は小分けにして、3Lくらいは持っていくといいとか、体温調節の上着はかさばらない薄手のものが良いとか。しっかり準備したつもりだけど、それでもやっぱり、登り切れるか少し不安。

 整備された石の階段を一列になって進んでいると、道脇に可愛い花が咲いているのを見つけた。ハーバリウムにしたいなあと誘惑されるけれど、山の花は採ってはいけない。グッと堪えて写真を撮った。

  

そんなふうにお花の発見を楽しんだり、景色を眺めたりする余裕があったのは登り始めて数十分。段々体が重くなってくる。6月でもまだ残っている雪の上を歩き始めると、足元にばかり注意がいくようになった。無口になってきた私に、「水をこまめに飲んでね。」と友人からのアドバイス。標高2000m程の山でも、高山病にかかることがあるらしい。喉が乾いてなくても少しずつ水を飲むこと、空気をゆっくり吸ってしっかり吐くことを意識して歩くようにした。

 登り初めはいきなりの運動に体がびっくりして、体が重かったけど、少しずつ慣れてくると汗をかくのも気持ちよくなってきた。血が全身に巡るこの感覚、久しぶりだなあ。まだまだ元気に歩けそうな気がしてくる。

 石がごろごろ転がる道に差し掛かると、◯や×、矢印が書いてある石をところどころで見かけるようになった。山での道標らしい。こんな山に最初に入って、道なき道を切り開いたのは、一体どんな人なんだろう。

 そんなことを考えていると、またまた雪の道。傾斜が強いこの道は、滑り落ちてしまいそうで少し怖い。斜面に向かって足の側面を蹴り入れるようにして歩いていく。ただ歩くだけよりも、一歩一歩が重くて歩きづらい。けれど、雪がない季節に登るよりも、雪があるときの方が短い距離で登れると友人が教えてくれた。それを知るとなんだから雪がありがたいように思えてくる。

 雪道を抜けると、今度は結構険しい岩の道。体全部を使ってよじ登っていく。しっかりしていそうな岩も、少し体重をかけてみるとぐらつくことがあって身の危険を間近に感じる。油断すると大怪我してしまうかもしれないという怖さの中で、普段歩いている道がどれだけ整備されていて歩きやすいのか、身にしみて感じた。

何度か足を止めそうになりながらも、仲間に励まされながらようやく山頂に到着。

 登り切った安心感と達成感で、風がすごく心地よかった。

 うわあ、気持ちいいなあ。

よく耳を済ませると、なぜか鳥の声がする。周りに木なんてどこにもないのに。

どこに住んでいるんだろうな。

 ひと息ついて景色を見下ろすと、海と空がどこまでも続いている。
天気が良くてずっと遠くまで見えるものだから、海と空との境界線がわからない。どっちも綺麗な青色をしている。

 少し肌寒くなってきた。山頂は風が強い。友人が入れてくれたホットミルクティが、疲れた身体に沁みる。

風を避けながらお昼ご飯を食べて、山頂を散歩したりして、雲の上の至福のひとときを楽しんた。

そろそろ下山の時間。暗くなる前に下山するには、山頂をお昼頃には出発しなければならないようだ。

 帰り道は行きとは別ルート、稜線に沿ってなだらかな道を降りていった。行きは景色を見る余裕がなかったけれど、帰り道はじっくりと堪能しながら歩ける。景色をひたすら楽しんでいたら、いつの間にか登山口に到着していた。

 朝早くから十時間も山の中にいて、身体はすごく疲れているはずなのに、なぜかとても清々しく、晴れ晴れした気持ち。休日は、家でゆっくり過ごすだけが”休む”じゃないんだなあ。怖い思いもしたけれど、それでもまた山に登りたいなあと思うくらい、とても楽しくて気持ちの良い1日だった。

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